クリーンシステム科学研究所「月刊ビルクリーニング」 2018年6月号『ツールのルーツ』コーナーにて、「 ほうき編 第3話(最終話) 庭ほうきができるまで 」と題し、黒シダほうきのルーツや、黒シダ・赤シダ・葉脈・化繊といった各種庭ほうきができるまでの解説が掲載されました。

黒シダほうきは1973(昭和48)年、アズマ工業が新素材による庭ほうきとして開発した商品です。それまでの日本の庭ほうきは赤シダほうきが主流でした。黒シダほうきの素材はインドネシアで採れるアレンの木に巻き付いているアレンファイバーという繊維です。赤シダと違い、細く、やわらかいのでしなやかに掃くことができます。

黒シダほうき


このアレンファイバーはほうき草の栽培地を広げるためインドネシアを視察していたときに出会いました。野ざらしでも腐らず、水に濡れても丈夫であるため、海底の電線の保護剤やロープ、さまざまなブラシ等の資材として使われていると現地の人に伺いました。幹に巻き付いた毛皮のようなこの素材は一回剥ぎ取っても5~6年経つと成長した幹にまた繊維が巻き付き、木の寿命が続く限り何度でも採集できるため、現地でも貴重な天然資源として大切にされています。

黒シダほうきと赤シダほうきは穂を精製した後結束して商品が完成します。黒シダほうきのアレンファイバーは細い繊維と太い繊維が絡まり合っているためこれをすき、数十通りの長さに分類して精製します。一方、赤シダほうきはパルミラというヤシの木の葉柄(葉と茎が繋がる部分)から採集した繊維の軸径をはぎ、木ハンマーでたたいて細かくして繊維質を取り出し精製します。それぞれ、結束後穂を二つ折りにしてカバーを固定し、穂先をカットして完成です。

結束


葉脈ほうきはヤシの葉脈を利用してほうきを作ります。葉脈ほうき商品化のきっかけは、インドネシアでヤシの枯葉の軸を丸く束ねた「サプリディ(マレー語で「サプー」はほうき、「リディ」は葉脈)」というものが使われていたことでした。この製造方法にヒントを得て研究を重ね試作品をモニター調査したところ、日本の従来の竹ぼうきより掃きやすく細かなゴミも掃けると大好評をいただき、1977年に商品化に至りました。

葉脈ほうき


化繊ほうきは繊維がポリプロピレンでできているため痛みにくく、水に濡れても繊維が絡まず耐久性に優れています。ポリプロピレン繊維の束を重ね、穂を焼き切ることで高温接着して結束します。化繊ほうきは化繊の量、太さ、長さ、材質で掃き心地が違います。穂が先割れになっている場合、床との接点で抵抗が多少なくなり軽く掃ける、掃く面積が広がり掃きこぼしが少なくなる効果が期待できます。用途に合わせて選んでみてくださいね。

「月刊ビルクリーニング」での全3話連載は今回で完結となります。いかがでしたか? 一言にほうきといっても、意外に奥深い道具なのです。

一貫して国内生産であることにこだわった「濱松出世手編みほうき」をはじめとした「手編みほうき専門サイト」はコチラから。

吾妻箒